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やがて、ソースになるトマト。どんなところで誰がどのように育てているんだろう?現地に確認に行った話。トルコ篇

久々に現地へ!現場、現物、現実を見て確かめる

 ものづくりの現場で大切にされる考え、「現場・現物・現実」を見て確かめる三現主義をご存じでしょうか。現場に実際に足を運び、現物を直接目で確認して、現実をしっかり踏まえてから物事を判断し課題を解決するという考え方で、当社は昔からこの三現主義を大切にしています。ソースの原材料についても同様の考えで、海外から輸入している原材料もできるだけ現地を確認。調達担や品質管理の担当である社員が行くのはもちろんなのですが、当社の場合、社長はじめとした役員も同行し(むしろ隊長!?)、現地の方とコミュニケーションと信頼関係を構築して帰国します。
 とはいえ、ここ数年はコロナ禍で海外への渡航が難しくなかなか現地に赴けませんでしたが、今年に入り規制が緩和したことで、今回の視察が適いました。久しぶり、ということもあって、今回は「広報も連れてくぞ~!」と声がかかり、同行することとなりました。これはレポートを書かねば・・というミッション。少々遅くなりましたがnoteに書きます。

トマトを持っている隊長・・・いや、社長

ソースはそもそも・・・さまざまな原材料をブレンド

 突然、歴史を遡りますが、ウスターソースの誕生は1840年頃。イギリス中部のウースター市で薬局を共同経営してたジョン・リーとウィリアム・ペリンが、インドの総督からの依頼で持ち込まれたヒンドゥー料理用のソースのレシピを研究し、さまざまな野菜や果実の組み合わせと香辛料などを調合して試すうちに、全く新しいタイプのソースとして生まれました。当時薬局だったリー&ペリン社は、現在でもウースター市で事業を営み、ウスターソースを全世界で販売しています。
 日本にウスターソースが伝わったのは明治維新以降で、洋食文化の広まりとともに、一般の庶民の口にも入るようになりました。次第に日本人の口に合うように酸味を減らして塩分を増し、香辛料をマイルドにするなど工夫が凝らされ、独自の味に進化していったことも日本らしいですね。

ソースに使う野菜・果実、香辛料のイメージ

 ソースは、野菜・果実と香辛料、酢や塩、砂糖といった材料をブレンドして独特の味に仕上げていきます。その中でも、トマト、玉ねぎ、にんじんなどが多く含まれていて、味を左右する重要な野菜。当社がソースづくりを始めたのは戦後のことですが、当初は原材料に使う野菜の一番味の濃い旬の時期に一年間に必要な量を一度に買い込んで、工夫して長期間保存していたそうです。その後、製造量が増加していくにつれ、量の確保や加工の手間が追い付かなくなったため、海外からの輸入も開始しました。原材料を輸入に切り替える際は、当時の役員と社員が現地に入り、どういった場所でどういった方法で作られているか、視察し目で見て対話して確認したうえで、安全で安心な原材料となると判断してから使い始めたそうです。

トマトを見にトルコへ、こんなところでした。

その現地視察、もちろん現在も大切にしており、ソースの主原料となる野菜・果実、なかでも一番多く使用しているトマトを視察することは重要なミッション。トマトの品質や供給量を安定させるために北半球と南半球を分けて仕入れているので、2月には南半球のチリ、8月には北半球のトルコを訪問し、トマトの圃場や加工される工場などを視察しました。

トマト、トウモロコシ、ひまわりの圃場が広がるトルコ

トルコは、東ヨーロッパと西アジアにまたがる国で、日本の約2倍の国土に約8,400万人が住んでいます。豊富なスパイスを使い、トマトなどのを野菜、肉類など素材の味を活かしたトルコ料理は、フランス料理や中華料理と並んで、世界三大料理といわれ、毎食トマトを使った料理を楽しみました。トルコの主要な産業は農業で、トマトの生産量は世界第3位といわれています。

どれを食べても美味しい

イスタンブールからトマトが作られる圃場まで車に揺られること約4時間。車窓からは、トマト、トウモロコシ、ひまわりを栽培する土地が数キロに渡って広がっています。この3種を転作して作付けすることで、連作障害を防いでいるとのことです。今回の訪問先は、比較的温暖で夏は乾燥する地中海性気候。トマト栽培に適した環境でした。

加工用のトマトってこんな感じ

日本でのトマト栽培は、支柱で茎を支えながら垂直に伸ばすスタイルをイメージしますが、これは生食用のトマトで用いられる方法です。ソースなどに使うトマトは加工用で、トマトが太陽をふんだんに浴びることができるよう、露地に茎を這わせながら夏場の収穫に向けて実を大きくしていきます。

露地に茎を這わせ、太陽の光を浴びる加工用トマト

トマトの種類で実に違いがあり、生食用と加工用では、形や硬さが異なります。加工用のトマトは生食用と比べ、肉厚で重さもあります。栄養的にも生食用よりもリコピンが約3倍、β-カロテンやビタミンCが2倍多いといわれ、食物繊維も含め、加工用トマトは栄養価が優れているのも特徴です。

加工用のトマトは肉厚でずっしり

10数年前にトルコを訪問した際、この地域ではほぼ手摘みで完熟したトマトのみを収穫していたのが印象的でした。今回話を伺うと、トルコでも機械化が進んでいて、今では機械での収穫が約6割、昔ながらの手摘みは約4割ということでした。短期間で多くのトマトを収穫するには機械が適していて、人手をかけず旬の時期にたくさん収穫ができるというメリットがあります。収穫時にはいっきに取り込みますが、熟していない緑色のトマトや出来の悪いトマトは、後の選別工程で取り除かれます。

どんな人が作っててどんな環境で育つか、ここを見る

どんな人がトマトを生産しているか、またどんな環境でトマトが育っているかを見ていく中で、必ず圃場の土を触ったり、側を流れる用水路も覗いてみます。そこに、ちゃんと生物がいるかどうかを確認するのです。過度な農薬を使っていたりすると生物がいないことがあります。今回視察した圃場にはバッタがいましたし、用水路には多くの生物がのびのびと生息していました。圃場でカメラを持って走り回っていると、「私も撮ってくれ!(トルコ語がわからないので推測ですが)」と多くの方から声をかけられました。広報として、役員が視察する様子を写真に収めることも仕事のひとつだったため、仕事の手を休めて集まってくださるのは助かりました。皆さん本当に素敵な笑顔、いい表情で写真を撮ることができました。生産する農家の方と購入・販売するトルコのトマトメーカーとの日頃の関係が良いことが表れています。生産者と購買側の関係が傾くことなく、フェアな状態だと感じました。用水路の生き物と、人々の笑顔、これは大きなチェックポイントです。

作業の手をとめ笑顔で応じる現地の方

収穫されたトマトはトラックで工場に持ち込まれ、厳しい品質管理の工程を経て加工されます。こうして、当社の品質基準にあったトマト原料となり、ソースになるために海を渡ります。
百聞は一見に如かず、現地に行って話をすることで信頼が深まる実感があります。これからも、現場・現物・現実の三現主義と直接コミュニケーションで、皆様に安全で安心していただける調味料をお届けしてまいります。

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